5、うつ病 診断 症状

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うつ病の症状を羅列しても、よく分からないと思うので本質的なお話からしましょう。

うつ病の本質

うつ病を一言で表すと、「存在・アイデンティティの危機」となります。

例えば、ヤクザから金を借りたけど返せない。明日組事務所に来いと言われているけど、行ったら殺されるかもしれない。これは自分の命の存在の危機になる訳ですよね。こんな時、布団に入ってぐっすり眠れますか? 晩御飯おいしく食べれますか? 味なんて分かりますか? これが”うつ”の症状になります。

上記の命の危機を想像してもらうと分かるように、”うつ”(うつ病の中核症状)は、不安・恐怖に近く、そわそわして落ち着かない感じです。誰一人として助けに来てくれないまま、処刑台に引き出されていく絶望寸前の状態とも言えます。
私は、中核症状の”うつ”に近いか判断するのに、睡眠の質、眠りが浅いか?中途覚醒があるか?味覚がなくなっていないかというところを聞いたりします。
それ以外のだるさや無気力、思考抑制、妄想、神経症的な症状は、派生症状と考えています。
純粋な“うつ”は少ないです。

“うつ”うつ病と区別して、中核症状という意味で使っています。

アイデンティティの危機

人間は肉体だけの生き物ではなく、社会的な生き物でもあります。つまり社会的な存在意義を失うことで、うつ病になることがあります。

よくある例ですが、「空の巣症候群」。お母さんが子育てに熱心で一所懸命子供を育ててきたけど、子供は独立し家を出てしまった。子育てが自分の存在意義だったために、それを失いうつ病になってしまったというお話です。その他にも仕事熱心だった人が、退職後にうつ病になってしまうという例もあります。

熱心なのは悪い事ではありませんが、一つのことだけに存在意義を偏らせてしまうとうつ病になりやすくなります。何事もバランスが必要です。

どこに存在・アイデンティティがあるか?

一口に存在・アイデンティティの危機と言っても、どこにそれがあるかは深堀りする必要があります。

たとえば、失業で”うつ”になってしまった場合、仕事がなくなった訳ですが、何を失ってしまったのか? 社会的地位なのか? 人の評価なのか? 会社の人間関係なのか? お金なのか? 一家の大黒柱の地位なのか? 仕事中毒だったのか? いろんな可能性があると思います。

患者さん自身も何を失ったか分からないこともあると思いますので、その時は仮定法で自分に質問してみるのも一つの方法です。
もし次の仕事が決まっていたら”うつ”になっていないか?
もし十分な貯金があったら”うつ”になっていないか?
もし独身だったら”うつ”になっていないか? など

アイデンティティの詳細が分かれば対応もしやすくなると思うので、参考にしてください。

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