4、神経症

神経症

近代の精神医学は、統合失調症を軸に発展してきました。患者が統合失調症か否かと鑑別することが重要であったためです。統合失調症は人格荒廃まで進むと考えられていたため、神経症はそこまで重篤ではない患者群という意味合いがありました。

神経症の症状は多彩であり、統合失調症や躁うつ病にも見られるため、近年神経症の病名は消えつつあります。一般的な神経症の種類について挙げてみました。(世界大百科事典(平凡社)より引用、補足)

神経症の種類

      症  状      備  考
神経衰弱心気的、疲労性亢進、刺激に過敏、集中困難、記憶減退のほか、腱反射亢進、自律神経失調がよく見られるはなはだしい過労と緊張から生じる
心気症上記の症状が体質的、慢性にきたと思われるもの。心気的、無気力、依存的、疾患逃避的である。頭痛、腹痛などの身体症状として表れているもの。身体表現性障害とも言う。
不安神経症不安そのもの、あるいは心悸亢進、呼吸困難などを伴う不安発作と間欠時の予期不安を示す。社会不安障害、広場恐怖症、対人恐怖症、パニック障害
強迫神経症強迫観念、恐怖症、強迫衝動、強迫行為などを繰り返して表す。そのさい批判を持ち不安を示すことが多い不安と共に強迫観念が起こり、確認行為・強迫行為を繰り返す。
ヒステリー心因性身体症状、すなわち失立失歩、失声を含めた運動麻痺、心因性めくら・つんぼを含めた知覚障害、および激しい震えとけいれんなどの繰り返す発作、あるいは持続状態転換性障害、解離性障害。
性格的表現で使われることもあるが、精神科ではそれを含めない。
抑うつ神経症抑うつ気分と精神運動制止が主症状。うつ病と違い、罪業観念よりもむしろ被害的、攻撃的に傾き、かつ症状の変化と動揺が著しい。最近では、この病名は使われなくなってきている。
離人症自分が自分であるという実感がなく、感情も外界に対する現実感も失われる。統合失調症や(躁)うつ病でも認められることがある。

強迫観念・強迫神経症

フロイトの精神分析で治療の対象としたのが神経症です。フロイトによると無意識の抑圧が症状として表出されると考えており、上記の神経症は症状は違えども根っこの部分は同じと考えられてきました。ここでは強迫観念・強迫神経症について解説します。

強迫観念
つまらないことが頭にこびりついて離れず、ばかばかしいと押さえてみても、粘りついたように繰り返して頭に浮かび、不快な不安な伴うような考えをいう。押さえようとすればするほど強く意識され、そのためイライラし、煩わしさを感じる。     
                          世界大百科事典引用

「鍵を閉め忘れたんじゃないか」「水道を閉め忘れたんじゃないか」「手にバイ菌が付いているんじゃないか」といった強迫観念が不安と共に沸き上がってきて、安心したいがために鍵や蛇口を何回も見直す、手洗いをするなどの確認行為・強迫行為をしてしまいます。強迫観念を取り除こうと思っても頭にこびり付いて離れず、確認行為をやればやるほど、強迫観念と確認行為が癖になっていきます。

強迫神経症
強迫体験(強迫観念と確認行為)が、他に症状を伴うことなく、比較的純粋に前景に出ているような病的状態に対して〈強迫神経症〉という名称が与えられているが、逆に強迫体験は必ずしも強迫神経症にのみ特有であるとは限らない。統合失調症のような精神病の症状の一つとして現れることがあり、また強迫体験のうち、あるものは正常人にも見られることがある。
                          世界大百科事典引用

強迫観念は抑えようと思っても勝手に出てきますが、自分の思考という感覚はあるので、自生思考とは違います。強迫観念には不安という感情が付随しているので、自分の思考という感覚があるのだと思います。たぶん強迫観念は、妄想と同じ系統の自動思考でしょう。

以前は精神病というと、統合失調症と(躁)うつ病を指していましたが、現在は定義は曖昧です。私は統合失調症・(躁)うつ病だけでなく、神経症も含めて使っています。

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