SST(生活技能訓練)は、患者さんが自立して社会生活を送るためのトレーニングです。主にコミュニケーションを通して自分の希望・意見を述べて、相手の言い分を聞きながら、より良き解決法を導き出せるようになるのが目標です。時には自分の意見を押したり、場合によっては引き際を見極めたりと練習に際限はありません。やはり大切なのは社会の中で実践し場数を踏むことです。
とは言っても初めは一人では心細いと思いますので、まずは友達と一緒に遊びに出かけましょう。一緒に食堂にでも入ったらそこでのやり取りも練習になります。
前回に比べ御飯の量が少ないなと思ったら、店の人に聞いていいか友達に相談して、OKだったら聞いてみましょう。
S:「ごはん、この前来た時はもっと多くて、今日は少ないんですけど・・・。」
この時は、店の人に前回が特別ですみたいなことを説明され、周囲のお客さんから失笑を買いました。
また男2人で街をブラつけば、たまに警察から職務質問をされることもあるでしょう。堂々と受け答えする友達の横で、おどおどしないで一緒に立っているだけでもSST(生活技能訓練)になります。次回職務質問されたら今度は自分が対応してみるのもいいでしょう。
他にどういう場面があるかS君に聞いてみましょう。
S君談
そうですねー。友達が一緒にバイトをやろうと言ってきたことがありました。初めは友達がバイト見つけてきてくれて一緒に付いていけばいいのかなと思っていましたが、友達はいきなりバイト情報誌を出してきて、「最初は俺が電話するから、次はSが電話して。」、「それで交互に電話かけていこう」と提案されました。そして友達は早速電話をかけ始めるのでした。そう言われて急に緊張感が走り内心ドキドキしながら、友達の電話のやり取りを真剣に聞きました。自分の番になり、断片的に覚えている友達のやり取りを真似して「もしもし、求人情報を見て電話したんですが、…」から始めていき、仕事の条件を聞いていきました。とにかく初めは早く電話を切りたかったです。早々に条件が合わず、すぐに電話を終わらせることができてホッとしたのですが、最後に電話をぶち切りしたようで、終わった後、「失礼します。」くらい言って切るよう注意されました。
こういう感じで修正されながら交互に電話をかけましたが、これにはだいぶ鍛えられました。結局友達が電話をかけた居酒屋に決まり、一緒に2週間位バイトしたと思います。
もちろん友達は、私が精神症状を患っていることは知らず、私を訓練しているという意識はなかったと思います。
この特訓で変に自信がついた私は、失われた青春を取り戻そうと思ったのか、高校の同級生何人かに電話をかけてみました。ノープランでかけましたが、みんな優しく普通に会話をしてくれました。
SST(生活技能訓練)は一つできたら終わりではないので、電話が掛けられるようになったらそのスキルを使って、次に挑戦してみて下さい。友達に電話をかけてみる、自分でバイトを探す、バイトをしてみるなど、どんどん拡げてどんどんSST(生活技能訓練)を実践していって下さい。
もちろん失敗することもありますが、失敗することも経験値をアップさせてくれます。
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