2、統合失調症 診断の仕方

統合失調症

とりあえず、統合失調症、躁うつ病、神経症の疾患像についてお話します。様々な精神疾患の病名がありますが、基本はこの3つになります。まず統合失調症について説明します。

統合失調症の全体像

世界大百科事典(平凡社)に載っている説明が分かりやすかったので、以下に引用・抜粋します。

統合失調症
たいていは青年期に発症し、幻覚、妄想、思考の障害、感情・意思の特徴的な異常を主とし、多くは慢性に経過して、いろいろな程度の人格的変調、進んでは末期荒廃の状態に至る。ひどくなると人格荒廃の状態に至る。

精神症状の概略について
自己をとりまく外界、環境が異質的、異常なものに変化したように感じ、これに対して警戒的で、疑い深い態度が強くなる。偶然の出来事を自分を中心として何か意味のあることのように考え(関係妄想)、また被害的に受けとる(被害妄想)。自己と他人が共通の世界に生きるという感じが失われ、患者は自己を中心とした独特の世界に住む形となり、他人はその舞台での道具立ての一つにすぎぬものとなる。一種の社会性の喪失であり、現実の世界からの遊離である(内閉)。すなわちカイコが繭に入ったように心理的に現実世界と隔絶して、その中で独特の思考をめぐらし、他から現実的な影響を受けない。いわゆる内閉的思考として、事の善悪、軽重といった判断評価も独特のものとなり、思考の内容としての概念、論理が他人との共通性を失い、しばしば抽象的な言葉が独特な意味づけをもって用いられ、勝手に新しい言葉を作ったりする。環境に無関心で現実的な興味を示さず、勉学、勤労などの現実の社会的努力は患者にとって無意味なことになる。統合失調症の意思発動の減退、感情鈍麻といわれる症状は、こういう方向に発展するのであって、やがては終日無為ぼう然、すわったままでいても退屈を感じないようになる。

診断にはその時の症状だけでなく、時間軸でも見ていく必要があります。時間経過による人格変化も出てきて、統合失調症らしくなっていきます。
現在は、精神科を受診するハードルが下がり軽症の患者さんも増えたため、ピッタリあてはまらない患者さんも多くいます。段々と統合失調症の境界が崩れ、他の疾患との区別が難しくなってきています。

統合失調症 陽性症状

被害妄想
自分を取り巻く環境が悪意のあるものに感じ、自分に対して攻撃してくるように思えてくる。周囲に対し、疑い深くなり警戒心を抱く。「周りが自分の悪口を言っている」、「盗聴器を仕掛けられた」、「見張られている」、「命を狙われている」、などと訴える。偶然の出来事を自分に関係して重大なことが起こっているかのように被害的に訴えるのを被害関係妄想とも言う。「他人と目があった瞬間に巨大な悪の組織が自分を狙っているのが分かった」など

幻覚
幻聴が一番多い。悪口が聞こえてきたり、脅されたり命令されたりする声が聴こえてくる。音楽や何かしらの生活音などの幻聴もあるが、被害妄想やネガティブな感情と連動していなければ、あまり問題ない。

思考の障害
自生思考:勝手に考えが頭に出てくる。
思考吹入:他者の思考が自分の頭の中に入ってくる。
思考伝播:自分の思考を他人が分かっている。「テレビで自分のことを言っている」など
作為体験:自分以外の力によるさせられ体験、「目が開けられなくされる」「勝手に言わされる」
連合弛緩:話のまとまりがなく、内容が意味不明。言葉のサラダ
思考途絶:思考が中断する。

統合失調症 陰性症状

陰性症状は主に慢性期の症状です。陽性症状も慢性期に見られますが、被害妄想は徐々に誇大妄想に変質していくこともあります。(被害妄想もなくなる訳ではありません)妄想の中で独自の世界に浸り、他人との繋がりが薄れていきます。周囲に無関心で現実に意識が向かなくなり、社会性もなくなっていきます。

感情鈍麻
感情や共感性を失う。防衛反応の側面もあるが、周囲の環境や人への関心が薄れている。

意欲減退
周囲への関心を失い、勉学や仕事・日常生活・娯楽など社会参加への意欲が失われる。

無為自閉
自分の殻に閉じこもり、一日無為に過ごすようになる。

統合失調症 追記

これが典型的な統合失調症のイメージですが、昔より軽い症状で受診するケースが増えたせいか、人格荒廃まで進む割合は減っていると思われます。
自分の殻に引きこもらず、家庭や学校、職場、作業所・・・などで、他の方と交流をして、社会性を失わないようにしてください。できれば長期入院も避けたほうがいいでしょう。

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