S君の症状は妄想だけではありませんでしたので、ザっとお話させていただきます。
強迫症状 参考記事:神経症
強迫症状とは、強迫観念に対して確認行為・強迫行為がある訳ですが、
「鍵を閉め忘れていないか?」という心配(強迫観念)に対して鍵の確認行為、
「バイ菌がついていないか?」の恐怖(強迫観念)に対して手洗い(強迫行為)してしまう
などがあります。自分でもバカバカしいと分かっていますが、不安が強くこれらを何回も繰り返してしまいます。
S君の場合は、「勉強このままではダメだぞ、試験落ちるぞ」という不安(強迫観念)に対して、「今日はこれをやるから大丈夫」という確認行為をしていました。
なぜこのような強迫症状になったかを説明します。
S君がどんどん妄想の世界に入っていくにつれ眠気が出るようになり、勉強も睡魔のためできなくなっていきました。時は高校3年生で受験が迫りつつあり何か眠気を取る方法はないかと考え、そこで思い付いたのが、「勉強このままではダメだぞ、試験落ちるぞ」と自分自身を脅迫することでした。自分自身に対して脅迫し不安を煽ることで、眠気を取る方法でした。これで眠気は取れましたが、不安があると勉強できないので、「今日はこれをやるから大丈夫だ」と確認行為をしてから勉強していました。
初めのうち、この方法は機能していましたが、徐々に強迫観念・確認行為はエスカレートし、精神的に不安定になり、疲労困憊していきました。
みなさんも、変なスイッチを入れて、無理に頑張ることはしないで下さい。
精神的にまいって、仕事や学校に行くのが難しくなっているのに、前日の夜に「明日は絶対行くぞ」と気合をいれるのも変なスイッチです。これは誇大妄想や躁状態に属し、次の日”うつ”が強くなりやすいので気を付けましょう。
参考記事:うつ病 原因はいろいろ
自生思考
日に日に強迫観念・確認行為がエスカレートし、何回も何回も繰り返すようになっていきました。強迫症状が煮詰まった高校3年生の10月末、いつものように「お前、このままでは勉強だめだぞ、試験落ちるぞ」と自分自身を脅迫した所、「今日はこれをやるから大丈夫」と勝手に頭の中に自生思考として出てきたのです。S君はこの時点でやっと、自分の頭が狂ったことを理解します。自生思考はこの一回だけです。
それ以降は、脅迫の自己暗示は怖くてできませんでしたが、今まで自分の意思でかけていたと思ってた自己暗示は、既に自分の意思とは関係なく、強迫観念としてS君を苦しめるようになっていました。何かしようとしたり緊張したりすると強迫観念も強くなりました。
強迫観念は思考の癖(自動思考)でもありますが、自分を責めるという意味で妄想の一種とも言えます。また強迫観念に付随している不安が、自生思考でなく、自分の思考という感覚を保たせてくれている気がします。
文章が読めない・言葉の意味が分からない
勉強で一番影響を受けた科目は国語です。特に小説や随筆がやられました。比喩的な感情表現が難しく、例えば「心が躍る」「冷汗が出る」「目からうろこが落ちる」など、表現が複雑になると意味が分からなくなります。また文章が長く主語・述語が入り乱れていると理解が難しくなります。これもその時の精神状態によってある程度分かったり全く分からなかったりします。どのように文章を読んでいたかは次の記事を参考にしてください。(暴露反応妨害法)
その点、数学はあいまいな部分がなく、問題の意味が分からないということはありませんでした。
思考障害
これは後ほど詳しく説明します。
その他
高校3年生の後半は、強迫観念、被害妄想、受験の恐怖で心が休まらず、気にしていた髪の毛もさらに抜け、毛生え薬をプンプン匂わせて、本当に痛々しい状況だったと思います。
精神病を発症したことに気付いてからは、勉強は新しいことを覚えるは諦め、現状維持を目標にしました。今回合格しなければ次の年は100%無理だと分かっていたので、集中力が落ちた分、勉強時間を延ばしてやるしかありませんでした。只々机に向かっていましたが、強迫観念で文章が読めなくなるんじゃないかという恐怖で押しつぶされそうでした。
受験までは必死でしたが、終わってからは、消耗が激しく、気分が沈み、体は重くてだるく、意欲の低下、思考障害も見られました。喜怒哀楽の感情はなく、不安を感情と言っていいのか分かりませんが、不安とつらさだけはありました。元々あった頭頂部が締めれらるような頭痛はずっと続いていました。
合格と引き換えに、自分の精神を売ってしまった感じです。半年以上強迫観念の自己暗示をかけ続けていて、途中で精神に悪いかもと気付いた時もあります。しかしS君は、たとえ精神を犠牲にしても合格のためならと、願掛けのようにやってしまいました。みなさんは何かを犠牲にしての願掛けは決してやらないでください。
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