次にどのように妄想に陥ってしまうのかを説明します。ここでは私の経験をお話します。主治医が精神病だったなんて皆さん聞きたくないとは思いますが、参考になると思うので聞いてください。
症例として扱いたいので、当時の私をS君とします。これはあくまでS君の場合であって、全員に当てはまる訳ではありません。
妄想の陥り方 S君の例
S君は内向的、まじめな性格で、中学・高校時代、部活はせず勉強中心の生活を送っていました。髪の毛が薄いというのがコンプレックスでしたが、学校生活は問題なく送れていました。
ここから先はS君に語ってもらいましょう。
僕がどのように妄想に陥ったかお話します。
僕が高校生の時です。授業を聴いていたら、前にいた同級生が急に後ろを振り向いて、「髪の毛薄いな~」とすごく楽しそうに笑ってきたんです。普通に授業が行われている最中に突然ですよ、僕は授業に集中していて無防備だったので、ガツンと殴られたような衝撃を受けました。激しく動揺してしまい、その日の授業はうわの空になってしましました。数日してようやく気持ちを立て直し、僕がその事件を忘れかけた頃、また彼は「髪の毛薄いな~」と笑ってきたのです。その時も同様にガクッと気力を奪われてしまいました。
そしてそれが何回も繰り返されると、またいつ言われるんだろうと気が気でなくなり、授業にも集中できなってしまいました。薄毛を気にしていた頭頂部は緊張性の頭痛で常に疼くようになってしまいました。
本当は怒って止めさせれば良かったんでしょう。しかし相手は腕っぷしが強く、僕が怒っても止めてくれなければ、ますますみじめになるだけで、気にしてないと装うことしかできませんでした。
S君もこの段階でプライドを捨てて誰かに相談するなりすれば、うつ病もしくは神経症のレベルで済んだかもしれませんが、あろうことか ここから更にこじれる事をしてしまいます。
僕の気持ちが弱かったんでしょう。どうしても気持ちが耐えられなくなって、僕も他人の容姿のあら探しをして、自分を慰めるようになっていきました。他人の顔を見て「あの人の鼻の形が・・・」とか「目が・・・」とか「顔の形が・・・」とか「頭が・・・」とか。どこか他人の容姿のあらを見つけるとホッと安堵感が広がり、人には気付かれないようニヤッとしていました。これを繰り返しやっていると、段々とあらを探すのが上手になっていきます。
S君は元々内向的でしたが、ますます周囲との会話も減り、一人の世界に浸るようになっていきました。
たぶん段々にだとは思いますが、気付くと「自分はみんなに見られている」「髪の毛が薄いことを笑われている」と感じるようになっていました。
S君の妄想の始まりは他人の容姿を嘲笑する所が始まりです。人と人との付き合い方が、嘲笑する・嘲笑されるの人間関係性が大部分になってしまい、その他の付き合い方を見失ってしまいました。そのために、他人も嘲笑しているようにしか見えなくなっていったのです。
人によっては「自分の容姿が醜いからだ」と自分を責め続け、直接被害妄想に入るパターンもあると思います。
ご理解いただけたでしょうか?
ここでのポイントは人間関係性です。S君は、自分や他人を傷つける人間関係性すなわち妄想に自ら進んでいってしまったのです。
注意!
ここで皆さんに注意です。
S君の事例を説明しましたが、皆さんS君を軽蔑しないでください。
S君を軽蔑するということは、皆さんが軽蔑する・軽蔑されるの人間関係性に入っていくことになりますので。
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