10、妄想について

症状

今回は妄想について深掘りしていきたいと思います。
妄想という言葉は皆さんもよく聞くと思いますけど、どういうのが妄想になると思いますか?現実にはありえない事を妄想というのでしょうか?

被害妄想とは

被害妄想は、「命が狙われている」「盗聴器が仕掛けられている」「悪口を言われている」などがあります。そんなことあり得ないからそれは妄想だというのであれば、患者さんをそんなことあり得る場所に連れていけば妄想じゃなくなるということでしょうか? 今戦争している国や監視国家など「命が狙われている」「盗聴器が仕掛けられている」のが現実となっている場所もあります。

患者さんも「何で自分の考えは妄想になるのだろう?」「医者の判断は本当に正しいのだろうか?」と疑問に感じると思います。このブログは患者さんが自分で精神病を理解し治療できるのを目的としていますので、患者目線で分かるようにお話させていただきますと、妄想とは”自分や他人を傷つける考え”となります。「私はダメな人間だ」と自分を卑下したり、希死念慮、自殺行為も妄想の範囲になります。そんなの言葉遊びじゃないかと、批判される方がいるかもしれませんが、第三者目線でなく患者目線で説明したいのでご了承ください。

「命が狙われている」「盗聴器が仕掛けられている」「悪口を言われている」いずれも自分を傷つける考えですので、残念ながら妄想と言うことになります。これらの被害妄想は現実にあってもなくても構いません。

被害妄想を考える上で、もう一つ大事な点

それともう一つ大事な点をお話します。皆さん自分がやられたことはしっかり訴えられますが、自分が他人に加害的な思考を持つことに対して無自覚な人が多いです。いじめの加害者も自分はいじめてないと思っているように、自分の発言・行動に加害的思考がないか点検するのをお勧めします。誰かを叱責している時、優しさからしていますか?それとも自分のこだわりを満足させるために叱責していますか?  普段の何気ない不平・不満も妄想の類になります。

また正しい事をやっていれば、妄想じゃないとも言いきれません。
法律を守って立派な事を言ってても、内心で搾取してやろうとか、あいつをやっつけてやろうとか、思っていれば、それも妄想になります。
行動や発言の背景にある思いがとても大切なんです。

そうなると、不平・不満も考えちゃいけないのかと、おっしゃる方もいると思います。そういう訳でもないのですが、これが精神に与える影響を追々ご説明します。私もしょっちゅう妄想していますので安心(?)してください。でも、妄想はするけれどこれは妄想だと自覚するのをお勧めします。

誇大妄想について

誇大妄想も現実的かどうかで判断するのではありません。

誇大妄想もよく観察すると、その背後には傲慢さ(自分は偉いんだみたいな)や自慰的感情が隠れています。選民思想も誇大妄想になります。選民思想には傲慢さ、他人を見下す加害思想(被害妄想の裏返し)が内包されています。つまり誇大妄想と被害妄想は質的に似ているのです。

また誇大妄想は否定されると、”うつ”や怒り、嫉妬、落胆などを引き起こします。被害妄想も否定されると、同様にこれらの症状を引き起こします。(参考記事:うつ病 原因はいろいろ

ちなみに、現実かどうかで判断しないと申しましたが、決して現実を軽視している訳ではありません。

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