23、認知行動療法②

治療

S君談
私がなんとかやってこれたのは、先輩、後輩をはじめ、多くの友達が、関わってくれたおかげです。特に大学1年生の右も左も分からなかった時期に、知り合ったG君の存在は大きかった。SST(生活指導訓練)で書いた事例の大部分は、G君と一緒に行動して経験できたことです。他にもいろいろありましたが、長くなりますので割愛します。

そんなG君と知り合ったのは、大学1年の5月頃です。大学の掲示板の前にいた時、向こうから声を掛けてくれました。しばらく話して思ったのは、この人の話す言葉はなんて意味がよく分かるんだろうと、口数は多いわけではないけれど、彼の一つ一つの言葉が意味を持って理解できたのでした。もしかしたら、たまたまなのかもと、思いましたが、その後もその後も変わらず彼の言葉は良く理解でき、赤ちゃん言葉で話している訳ではないのに、何でよく分かるんだろうと不思議に思っていました。
その頃の私の思考状態については、次の記事を参考にしてください。
思考障害と対話型思考
思考を助けてもらう・思考を拡張させる

今考えると、たぶん彼は意志の思考をしているからだと思います。自分はこう考える、こうしたいというのがはっきりしていて、その思考から発する言葉が私にとって理解しやすかったのだと思います。困難に直面しても、他人を批判する思考がなく、自分がどのように進むかを考えるタイプです。私が何か行動起こす時も「やめとけ」とか反対することはなかった。また私の精神を詮索しない所も、ありがたかった。かと言って他人に無関心という訳でもなく、一緒に遊んでいて、他人から私がいちゃもんをつけられた時は、バシッと言い返して守ってくれました。私がまぬけなことをしでかしても、私を責めることなく、一緒に笑われてくれました。彼と一緒であれば、自分ではできないことでも、踏み込んで経験できる、しばらく彼に付いていこうと思っていました。
そんなG君はよく私を誘って、遊びに連れて行ってくれましたが、なんで私を誘ってくれるのかはいつも疑問でした。

ある時、私と付き合っている理由を話してくれたことがありました。
彼は、「俺がSと付き合っているのは、Sの笑顔がいいからだ」と、「Sの笑顔を見ると、ホッとして癒されるから付き合っているんだ」と、言ってくれました。

私は、それまでは周囲が恐くて、内心おどおどしながら愛想笑いをしていたので、卑屈な笑い方をしているんじゃないかと思っていました。実際、変な笑い方と言われたこともあります。

彼が放った「Sの笑顔がいい」「Sの笑顔を見ると、ホッとして癒されるから付き合っているんだ」という言葉を聞いた瞬間、時が止まり(思考が止まり)、なにも言葉を発せませんでしたが、ただ、胸の奥にじんわりと暖かくなるものを感じました。(これは比喩表現ではないです) 
そして、思わず涙がこぼれそうになりましたが、友達の前では涙を見せたくなかったので、グッとこらえ、涙を流す代わりに「もっと、自信を持って、笑っていいんだ」という思いを何度も噛みしめました。

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